平成8年(1996)1月より、「趣味の木工旋盤」の分野で情報発信を開始し、木工雑誌、ビデオ等を通じて「ウッドターニング」を紹介しています。
平成12年(2000)10月より、、機器の販売を始めました。適切な機器を提供できるようになりました。
平成13年(2001)7月からは、「木工旋盤無料体験工房」を開講しました。講習時にとどまらず、ご自宅に帰った後でもウッドターニングを楽しめるように指導するのが特色です。たとえば、刃物が切れなくなれば、ウッドターニングは楽しくなくなることは容易に想像できるでしょう。刃物の研ぎ方(シャープニング)と旋削方法(ターニング)は実は密接に関係しています。1日1作品といったゆったりとしたペースで、希望される作品づくりを体験してはいかがでしょうか。近くのビジネスホテルに泊まって、一泊ニ日やニ泊三日の休暇をとって体験実習し、作り上げた作品をお土産にお帰りください。
平成15年(2003) より、アジアで初めてアメリカン・ウッドターナー協会の支部となったFEWS(極東ウッドターニング協会)の創立に奔走し、年間4回、東京の国立青少年センターにて定期的な講習会を支援しています。
平成16年(2004)は、FEWSの活動をバックアップして、日米間で若年齢者の交換交流を約一ヶ月の期間で行い、10月1−3日にはアメリカの著名なウッドターナーを東京に招いて日米交流をはかりながら、日本の古来から受け継がれた木工挽物と西洋のウッドターニングの交流や発展の礎に貢献しています。また、毎月第二土曜日に浜松にて月例会を開始し、愛知県、長野県、三重県など東海地方のウッドターナーが集まり、情報交換、技術講習、作品制作を7名ほどで実習することが定着してきました。
平成17年(2005)は,FEWSへの新入会・継続入会をバックアップしようと、商品代金の10%割引特典を進呈しました。
木旋公募2005の審査員も引き受け、作る楽しさの普及以外に、鑑賞する楽しさも体験することになります。今年は材木、特にウッドターニングの枠を広げる生木の活用へ注力したいと思います。板状の素材はペン作りなどに適しますが、国内では5cm厚み以下の板材しか流通していませんので、適当なボリュームの素材を入手することは思いの外難しいのが現状です。国内には乾いた木を使うのが正常のような慣習がありますが、欧米ではフレッシュな欠陥のない素材が好まれています。木材をどのように入手して、活用すればいいのか環境保護、リサイクルも含めて捉え直さなければならないのかもしれません。10月にはイスラエルから欧米でも評価の高いエリさんをゲストに招き、色々な国際交流を通じて理解を深めて行きたいと思います。日本語のウッドターニングの本を出版する引き合いもありますので、普及活動の足跡にしたいところです。
ウッドターニング(WOODTURNING)とは…
材木を旋回させながら、手に持った刃物で削り、紙ヤスリで磨き、仕上剤をつけて塗装する一連の作業をウッドターニングと呼びます。ヨーロッパ、北アメリカ、オセアニアで盛んで、素人中心の趣味として1990年以降、刃物や機器の進歩に伴い定着してきました。
日本では、1995年頃から木工雑誌で紹介され始め、円高も手伝って海外から機器が輸入され、雑誌への関連記事の連載やビデオ等が定期的に発行されるようになり、「趣味の木工旋盤」先進国同様の技術を基本に、ウッドターニングに興じる人(ウッドターナー)が少しづつですが増えてきました。
世界的にはアメリカが最も盛んで、カナダ、イギリス、オーストラリア等の英語圏の中高年の間で盛んです。ウッドターニングに関心のある人に情報や教育の機会を提供する世界最大規模の非営利団体AAW(アメリカン・ウッドターナーズ協会)は創立18年を迎え、約1万4千名の会員がいて、毎年6月末に開催場所を各州に移しながら、約1千人規模の国際シンポジウムを毎年も開催しています。AAWの会員はアメリカ国内にとどまらず、世界各地にいて、AAW支部は隣国カナダにとどまるらず、南半球のオーストラリアにも、日本にも出来ています。日本の伝統的な木工挽物もAAWのシンポジウムで幾度か実演され、1999年は鳴子コケシ、2002年は江戸独楽が紹介されました。
2004年は若年齢者の交換交流と、お忙しい中高年齢者が東京でアメリカのトップターナーの実演を間近で見る国際交流でした。12月にはFEWSを後援して。木工旋盤手工作品の展示会を兼ねた販売会を東京で開きました。ボールペン、照明、ポケットの中の小銭や鍵の受け皿、スプーンやフォーク、木の皮が縁周りに残るナチュラルエッジ・ボウル、ガラスとのコンビネーションが新鮮なワイングラスやビールグラスなどなど、一体どんな作品が注目されて、売れるんだろうと、参加者は期待と不安の交錯する中での作品づくりを経験しました。しかし、ペンづくりの体験コーナーは盛況でしたが、販売の方は散々でした。縁故頼みの来場者は、作品を見てサンプルと認識してしまい、知人のウッドターナーを通じて後日「あそこで見たあれと同じ物を貴方が作って!」と依頼してくるのでした。見ず知らずの人の作品はほとんど購入されませんでした。ご近所、友人御用達になるつもりは、ウッドターナー本人はなかったと思います。
2005年は様々な形でウッドターニング作品展が開かれるようです。プロ作家が企画して公募作品を集め、展示・販売会を主催するもの、東京に住むアメリカ人を相手にFEWSメンバーが作品展示・販売する企画があります。縁故がらみでない一般の方々と作品づくりを始めたウッドターナーがどう向き合うのか、試行錯誤が続きます。AAWのシンポジウムに5年前に出演したコケシ工人が、5年ぶりに出演する予定です。前回は、伝統的な挽き物づくりを、今度は描画を中心に紹介する予定です。また、FEWS(極東ウッドターニング協会)を後援するため、FEWS(極東ウッドターニング協会)入会継続者には、木工旋盤同好会取扱商品について10%割引特典を進呈することにしました。
不思議なもので、木工旋盤をはじめとする機器は、ウッドターニング最大の市場アメリカでは殆ど製造されていません。大消費地に世界各国でつくられた製品が集まるということです。木工旋盤やチャックは南半球のオーストラリアや隣国カナダで製造されるものが長年定評があります。木工旋盤用刃物はイギリスが大半です。
しかし、十年、二十年という長さで、ウッドターニングの移り変わりを見てみると、劇的な変化がそこかしこに現れ、メーカーの栄枯盛衰も現れます。1980年代、今から20年以上前になりますが、木工旋盤用刃物が炭素鋼(カーボンスチール、いわゆるハガネ)から高速度鋼(ハイスピードスチール、略してハイス)が取って代わりました。摩擦熱で急速に切れなくなるので、現在も一日に何度か刃物を研ぎなおしますが、ハガネの刃物では「5分間削って、5分間砥ぐ」ことが、後の木地磨き作業の時間を節約する賢い選択でした。しかし、これほど頻繁に研ぎ直しをするのでは、アマチュアには堪りません。集中して制作に没頭できないのです。刃物の進歩により、ウッドターニングは趣味人や工芸家の領域にまで浸透していきました。その後も、切れ刃寿命の長い高速度鋼の進歩はつづき、ハイス材も差別化され現在に到ります。普及品はイギリス製M2材、高級品はオーストリア産ASP2030材や2060材、アメリカ産A-11材(CPM10V)やV-15(CPM15V)です。
ウッドターニングの3要素
趣味の木工旋盤を始めるにあたり、是非知っておいて頂きたいのは次の要素です。
1.シャープニング(Sharpening,刃物研ぎ)
2.ターニング(Turning,旋削)
3.フィニッシング(Finishing,表面処理)
まず、木工旋盤で使用する刃物と他の木工用刃物の大きな違いは、頻繁に砥ぎ直す必要があることです。
1日に何度も研ぎ直さなければ、刃先は消耗してしまいます。木工旋盤で使用される刃物は耐熱性の高い高速度鋼(HSS,ハイスピードスチール)を使用しますが、それでも摩擦熱と衝撃力で短時間に切刃のシャープさは失われてしまいますので、自分ですぐシャープさを取り戻さなければなりません。では、どのようにして・・・?それがシャープニング、刃物研ぎです。
次に、材木を木工旋盤の旋回軸にいかに取り付けるかを考える必要があります。当然、安全は最優先です。また、材木は金属より軟らかいので強固につかみがたく、均質でもなく、繊維方向もあります。特に、以下の2つの区別は重要です。旋回軸と木の繊維方向を平行に取り付けるセンターワークと、旋回軸と木の繊維方向を交差するように取り付けるフェイスワークの違いです。木工旋盤では旋回軸は水平ですから、棒状の素材をセンターワークで加工すれば、両側面は木口となり、繊維がロープの端末のように束になっていて、比較的削りにくく、それ以外の途中の部分は木端で、比較的削りやすい半面、繊維がガサガサに削げてしまう場合が起こります。一方、板目の材を旋回軸と繊維方向が交差するように取り付ける場合では、左右の両側面は木端で、その中央は旋回する度に、木口、木端、木口、木端と移り変わり、削りにくい部分と削りやすい部分が交互に回ってきます。木端の部分はきれいに削れても、木口の部分にはササクレが消えないのでは円く削れず困ってしまいます。では、どのようにすれば・・・?それがターニング、旋削です。
最後は、木の表面処理です。作品を制作した状態を維持する「汚れ防止」の役割、手触りや外観を使う好みに合うように調節することなどが含まれます。汚れ防止では塗料を木に浸透させる場合と、浸透させずに表面だけ覆うがあります。たとえば、クルミ油を未塗装面に直接塗った場合は浸透し、木口は木端より余分に浸透するため、濃淡が出てしまう樹種もあり、外観上望ましくない場合があります。一方、カルナバ・ワックスなどは加熱しないと溶けない性質ですが、ウッドターニングでは摩擦熱を利用して薄く延ばすことが出来ます。浸透しないため、濃淡を生む恐れもありません。更に、ワックスは手触り感を改善する効果も生みます。まずは、使う人に気に入ってもらえるような表面処理を施すといいでしょう。自分が使うなら自分が気に入るように。相手に贈るなら、大切な人が気に入るような表面処理にするということです。では、どのような選択肢があるか・・・?それがフィニッシングです。
こういった3要素をレベルアップしながらウッドターニング上手になっていただきたいと思います。
では、どのようにして、・・・?雑誌に2年半連載記事を書いても理解は進みませんでした。26種類のビデオを制作してきましたが、3要素の上っ面しか理解は進みませんでした。背水の陣で、マンツーマンで教えるようになり、やっと伝えることができるようになりました。木工旋盤同好会の工房に来て、成功体験を重ねていただきたいと願っています。
自己流では困難に打ち勝つことは難しいでしょう。2000年にノルウエーでウッドターニングクルーズに参加し、北極海を巡りながらウッドターニングを経験しました。そのときのキャッチ・コピーは「10日間で10年分上手くなる!」でした。世界各地から観光がてらに集まったアマチュア・ウッドターナーの問題点は、まずは刃物選びの間違いに始まり、刃物を研ぐ困難さに立ち往生していることでした。彼らはグラインダーとグラインデング・ジグの使い方を教えてもらい。10日間に刃物の研ぎ方、使い方を身をもって体験したのです。立ち往生から解放された彼らを見て、日本でも同様な困難を克服することができると確信して、現在日々実践しています。